佐々木教授と語る地域創生論
Part1 若者と企業の新しい関係性
創業70周年を迎えた佐元工務店が掲げる新たなミッション「この地に根差し この地を愛し この地で活きる」。この理念を実現するためには、次世代を担う若者との関係構築が不可欠です。
今回は宮城大学地域創生学類長の佐々木秀之教授をお招きし、従来の採用観を見直す「共創」という概念について語りました。地域と大学、企業と学生を結びつけてきた教授の実践知から、地域工務店が目指すべき人材育成の新しいカタチが見えてきます。

地域工務店が直面する課題のひとつが若手人材の確保です。少子化が進む中、企業はこれまでの「選別する」採用から、「選ばれる」企業づくりへの転換を迫られています。
佐藤社長
「佐元工務店としても今後は若者を“受け入れる”のではなくて、若者に“選ばれる”企業づくりをしていかなければならないと感じています。今回のリブランディングでも、そこは意識しました」
佐々木教授
「企業が本気で学生に仲間になってもらいたいのであれば、やはり学生と関わることが大切です。学生たちと1時間だけ会話するといった表面的な関わりではなく、関わりを繰り返していくことが必要だと思います」
新社屋を企業と若者のコミュニケーションの場にー。
佐々木教授が提案するのは、企業と学生が日常的に接点を持てる仕組みづくりです。佐元工務店の新社屋のコミュニティスペースを活用した、自然な交流の場の創出に大きな可能性を見出していました。
佐々木教授
「コミュニティスペースに集まった若者の話をじっくり聞いてみると、何かひらめくことがあるのではないでしょうか。従来の企業経営の常識からすると“無駄な時間”と捉えられていましたが、これからの時代はそういったコミュニケーションにこそ大きなチャンスが転がっていると思います」
佐藤社長
「新社屋は、さまざまな場として活用していきたいです。私たちは地元で生きていくので、受け身ではなく、こちらから若者に握手を求める気持ちでいきたいです」
従来の雇用関係を超えた持続的なパートナーシップ
そして佐々木教授が強調したのが、「共創」という概念です。従来の「雇用」という概念自体を超えて、これからは持続的なパートナーシップを構築することが重要だといいます。
佐々木教授
「“雇用”という感覚であれば、好きなときに辞めればいい。それが“関係性”であれば、会社を辞めても関係は続きます。この会社が好きだという気持ちがあれば、たとえ別の企業で働くことになっても関わり続けたいと思うはずです」
佐元工務店が掲げる「この地に根差し この地を愛し この地で活きる」というミッションは、まさにこの共創理念と合致しています。
地域企業だからこそできる、長期的な関係性に基づいた人材育成が、新たな地域創生モデルとなる可能性を秘めているのです。
次回は、佐々木教授が実践する公共建築における住民参加型設計プロセスと、大学と地域の連携による学び続ける社会の実現について詳しくお伝えします。