佐元工務店のリブランディングプロセスで実践された朝礼改革。
それは単なる社内制度の見直しにとどまらず、社員一人ひとりが「問い」を立て、自ら考え発信する組織文化への転換でした。
この変化を支えたのが、宮城大学佐々木教授が提唱する「学問の本質」に立ち返る考え方です。
「この地に根差し この地を愛し この地で活きる」という理念を深化させるためには、社員が受動的な指示待ちから能動的な問題発見者へと変わることが不可欠。
地域創生の現場で実践してきた教授の教育論から、100年企業を目指す地域工務店の組織づくりのヒントを探ります。
佐元工務店のリブランディングと並行して実践されたのが、社内朝礼の抜本的な改革でした。形骸化していた従来の朝礼を、社員の思考力を引き出す場へと転換したのです。
佐藤社長
「以前は朝礼当番が1分程度喋る場があったのですが、天候と季節の話しかしなくなってきたので、それをやめました。新しいミッション・ステートメント・コンセプトに関して気づいたことや感じたことを2分喋り、次の担当がその場で感想を伝えるという形に切り替えたんです。若い社員が『そんなこと考えてたの』っていうことをみんなの前で発表するので驚きました」
佐元工務店の朝礼改革の成功を受けて、佐々木教授は学問の本質について語りました。
佐々木教授
「学問というのは『問いを学ぶ』ですから、自分がこれについて学びたいという気持ちが大事です。強制的な学びではなく、自ら学びたくなる時を待って、そのときに学べるプログラムがあるのがベストです」
教授は、現代の学生を評価する際の視点についても言及しました。
佐々木教授
「探究学習をやってきた学生に何をやってきたか聞くと、本当にやった子はすごくいっぱい喋るんです。うまくいかなかったことも含めて語れる子の方がいいですよ」
そして佐々木教授が提案したのが、大学教育の変化を企業にも応用すること。現代の学習者に適したアクティブラーニングへの転換が必要だというのです。
佐々木教授
「今の大学では、90分授業を一方的に喋ることはやっていません。たとえば、導入30分、体を動かす30分、振り返り30分と区切り、インプットとアウトプットを繰り返します」
現代の学生と従来世代の学習スタイルには大きな違いがあることも指摘。企業側もこうした変化に対応した研修方法を考える必要があると提案しました。
佐々木教授
「学生は今の授業に慣れているので、昔のように社長の話を長時間聞くのは難しい。学生たちは、ずっと座ってるのは嫌で、何かしら動きたいんですよ」
教授が重視するのは、共創プロセスにおける相互承認の文化です。
批判ではなく称賛こそが創造性を引き出す鍵だと指摘します。
佐々木教授
「どんな意見があっても正解です。共創というのは、いかにユニークな答えを出すかということ。ユニークな答えを出すには、みんなで称え合うことが大事です。世代間の共創も重要で、若者たちはデジタルに慣れているのですごいとも思っていませんが、年配者にはフレッシュに聞こえます。一方で若者たちは、目上の人の意見をすごいとよく言ってますね」
この相互作用こそが「共創」の本質であり、一方的な教育ではなく双方向の学び合いによる組織発展のメカニズムなのです。
佐元工務店の朝礼改革は、まさにこの「称賛の文化」を体現したもの。
社員が自分なりの「問い」を立て、それを仲間と共有し、互いに称え合う。
このサイクルこそが、「この地に根差し この地を愛し この地で活きる」という理念を深化させる原動力となるでしょう。

全3回でお届けした、佐々木教授とのスペシャル対談。
地域創生の取組みに尽力されている佐々木教授の広い見識は、「この地に根差し この地を愛し この地で活きる」をミッションとする企業として未来に存続するためのヒントが得られた貴重な時間でした。
今回の対談を通して、今後も地域のインフラを支える企業として、快適で高品質な住宅を提供する住宅会社として、そして、人々が集い・交流できる場を創出することで、地域の未来に貢献していきます。